おすすめの洋書紹介(67冊目)The Hunger Games 【少し難しい】【ディストピア】

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 おすすめの洋書67冊目はThe Hunger Gamesです! 実は昨日読み終わったばかりなのですが、とても面白かったので早速紹介してしまうことにしました。10万語近い長さのペーパーバックを読むのは久しぶりだったのですが、夢中になって読めました。The Hunger Gamesは有名な作品なので、1140万語以上読んでおきながら、今まで読んでこなかったことに驚きです。

語数……99750語

難易度……少し難しい。使われる単語が極端に難しいということはないですが、ネイティブ向けでそれなりの長さなので普段からペーパーバックを読み慣れていた方が良いと思います。Amazonの商品ページでは対象読者年齢12~17歳となっていました。参考までに記しておきますが、自分は多読累計1143万語、英検1級の時にこの本を読みました。

ストーリー紹介……独裁政権の主催する子供たちの殺し合いが国家イベントとして確立する世界観のお話。毎年12の地区からは男女1人ずつの計24名が中央都市に集められることになっている。普段は食べ物も満足に確保できないような貧しい生活を送っている彼らは、食事や建物など全てが豪華な中央都市の姿に驚くのだった。しかしこの国家イベント(=the hunger games)では勝者はたった1人のみである。従って各地区から送り出された24人のうち、生きて故郷に帰ることができるのもたった1人なのである。本作品の主人公の少女Katnissは妹の身代わりとしてその年のthe hunger gamesに参加することになった。同じ地区からはPeetaという少年が参加することになっていた。2人は直接喋ることはなかったが、地区の中でもより貧しい地域に住むKatnissはかつてPeetaに命を助けられたことがあった。恩を感じていながらも最終的には殺さなくてはならない相手だという事実はKatnissを苦しめていた。この殺し合いは娯楽的な側面を持つ国家の一大イベントであるため、開幕の前には参加者のインタビューなどが放送されていた。しかしそこで衝撃的なことが起こる。Peetaは全国民に放映されるカメラの前で、「たとえ僕が勝っても故郷で好きな人と結ばれることはありえない。僕がずっと前から好きだったのは一緒にここにいるKatnissなんだから」のようなことを言い放つ。しかし勝者は1人だけ。そうこうしているうちに殺し合いのゲームは始まってしまい──

 というお話です! もう本当に夢中になって読みました。次々と驚きの展開が訪れるので、けして退屈することなく最後まで読めると思います✨

 個人的にはこの作品はディストピアのフィクション小説でありながら、大いに現実世界とリンクするところがあると思っています。そのことについても書いたのですが、あまりにも長くなってしまったことと、主観に溢れていることから記事最後にまとめて載せています。興味のある方だけ見ていただければ幸いです。

ちなみに本作品は映画化もされています↓(予告動画)

The Hunger Games (2012 Movie) – Official Theatrical Trailer – Jennifer Lawrence & Liam Hemsworth

              【おすすめの洋書紹介(67冊目)おわり】

現実世界における社会の断絶とディストピア小説The Hunger Gamesについて

 以下はコロナ禍での個人的な話を大いに含みます。読後の苦情は受け付けません。

 このThe Hunger Gamesはもちろんフィクションなのですが、ある意味では現実にもリンクしているところがあると思います。The Hunger Gamesでは一部の裕福な者が貧しい者が殺し合う様子を娯楽として消費します。現実世界だとさすがにここまでのことはなかなかありませんが、社会の断絶という意味では無縁のことではないでしょう。

 私はコロナ禍でそうした断絶を強く感じました。社会に格差が存在することなどもちろん最初から分かっていましたが、今回の騒動ではそれがグロテスクな形で可視化されてしまったように思います。

 ニュース番組では日本よりも遥かに感染者が多く、ロックダウンをしていたとある海外都市の映像が流れていました。そこに映し出されていたのは、スーパーで買い物代行をする人々の姿でした。金銭的に余裕があれば、自らは外での感染のリスクを避けて他者に買い物を頼むことができます。そこで私がショックだったのは、買い物代行でスーパーに来ている人々の人種や性別に偏りがあるように見えたことです。詳しくないので、代行の報酬額や正確なデータとしてどの程度偏りがあるのかは分かりません。しかし、ニュースに映し出された一瞬だけでもなんとなくそうした断絶が垣間見えたのです。

 今の話は海を挟んだ遠い海外都市の話でしたが、社会の断絶という意味では日本でももっと身近に感じることがありました。それはエッセンシャルワーカーかどうかということです。コロナ禍以前は労働の種類を二分するとすれば、ブルーカラーorホワイトカラーとなっていたと思います。しかし、コロナ禍ではエッセンシャルワーカーという言葉が連呼されるようになり、自らの職業の位置づけを意識した人も多いのではないでしょうか。それぞれ苦労はあったはずですが、どちらに属していたかによってコロナ禍での景色の見え方はだいぶ違っていたように感じます。

 当時の私はエッセンシャルワーカーに分類される職業に従事していました。非医療とはいえ、ある意味で止めると死人が出る職業なので(大半のエッセンシャルワークはそうでしょうが)フル稼働せざるを得なかったのです。実際のところ、それはフル稼働というレベルではありませんでした。休日出勤や過労死レベルを超える残業が常態化し、過労と精神的なストレスから勤務中に倒れる者も1人や2人ではありませんでした。もちろんそんななかで健全な精神状態で働けるはずもなく、現場は少なからず殺気だっていました。仕事を止めるわけにはいかず、仕事の性質上テレワークをするわけにもいかない。今となっては考えられませんが、当時はマスクもろくに手に入らず、消毒液も売り切れ。現場に設置するアクリルパネルはいつになっても納品されない。そして世界各国で大勢が亡くなっているらしいという恐ろしいニュースを眺めながら、恐怖に震えて出勤して更なる「死人」を出さないようにと必死で働いていたわけです。

 そうして身も心もすり減らしていたわけですが、本当にきつかったのは身近だとかつて思っていた人たちに心ない言葉を投げかけられたことだったのかもしれません。当時はエッセンシャルワーカーという言葉もろくに広まっておらず、出勤する人を見下すような風潮も今よりもあったと思います。

 「こんな危険な時に外に出られるなんてすごい神経だね。私はおうち時間ちゃんとやってるよ」とか、その他にも出勤していることを知られただけでいろいろと嫌味を言われました。私は別にいいんですけど、あなたが「おうち時間で頼んだ♡」って写真を投稿してるUberのテイクアウトランチも危険な時に外に出た配達員が届けたものなんじゃないですか?みたいな。

 全員が全員そうとは言いませんが、日本でのロックダウンを強固に主張する人の多くは自分がロックダウンで働かざるを得ない側ではなかったように思います。ロックダウンしても生きていけるってことは社会インフラが何らかの形で動いているという前提があるはずです。誰かが社会を維持しているって理解した上で言っているならともかく、どうもその辺の理解が薄い人も少なくなかったように思うんです。食料入手の例を考えるだけでも容易に想像できませんか? ロックダウン中に食料がまともに手に入るとしたら、それだけでも生産している人、配達している人、スーパーで勤務する人が外で働いていることぐらいは分かるような気がするのですが……

 これは個人の問題なんですが、各メディアで執拗に「おうち時間」を強調していたのも嫌でした。エッセンシャルワーカーで「死人」を出さないために連日ボロボロになっていた自分にとっては、社会の流れと自分の立場の違いを突き付けられるのが辛かったです。もちろん外に出なくて済む人は「おうち時間」だろうがなんだろうが、家でおとなしくして感染リスクを下げればそれでいいんですけどね。当時はそういうことを考えられないぐらい余裕がありませんでした。

 ところで医療従事者に感謝を!って感じで行動を起こすのが流行った時期があったと記憶しています。もちろん感謝の意を示すのは大事だし、彼らが社会を支えていることは認識すべきだと思います。だけど「医療従事者に感謝を!」と言いながら、楽しそうに歌ったり踊ったりするのって本当に彼らの役に立ってるの?とすごく疑問でした。自粛期間中に歌ったり踊ったりするのが悪いということではなく、「医療従事者に感謝を!」って名目を堂々と掲げているのが偽善的だと感じてしまったということです。本当に感謝しているなら1円でも寄付した方がよっぽどいいのでは……?とか思っていました。

 感染リスクに耐えながら必死に働いている人を安全地帯から娯楽気分で眺めているようにさえ感じていました。それでThe Hunger Gamesを読んで思ったわけです。ああ、現実とリンクしているんだなと。The Hunger Gamesでは殺し合いの中継をスポーツイベントのように楽しみ、盛り上がる人々の姿が描写されていました。現実はもちろんそこまで悲惨じゃないですよ。でも、自分に危険が及ばないところからあれこれ言うのってちょっと似てるなと。

 ここまで長々と書いてきましたが、立場が違えば自分だって全く違う景色を見ていたかもしれません。The Hunger Gamesの感想を考えていたらだいぶ脱線してしまいましたが、みなさんにも読んでいただいて何を感じるかを確かめていただければと思います。

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